事例Ⅲの特徴・出題傾向
出題テーマ
- ▸ 生産計画・生産スケジューリング
- ▸ 在庫管理・調達管理
- ▸ 品質管理(TQM・ISO)
- ▸ 外注・サプライチェーン管理
- ▸ 技術承継・熟練技術の標準化
- ▸ 設備投資・自動化・IoT活用
設問の傾向
- ▸ 「生産効率化のための施策を述べよ」→ 改善型
- ▸ 「品質問題の原因と対策を述べよ」→ 品質管理型
- ▸ 「リードタイム短縮のための方策を述べよ」→ 納期型
- ▸ 「新製品展開に向けた生産体制を述べよ」→ 戦略型
- ▸ 「外注管理の問題点を指摘せよ」→ SCM型
事例Ⅲ攻略のポイント
事例Ⅲは「生産の現場で何が問題になっているか」を与件文から正確に読み取ることが重要です。「QCD(品質・コスト・納期)」を軸に問題を整理し、「標準化・見える化・情報共有」という解決の方向性を意識しましょう。技術的な難しい言葉より「なぜそれが問題なのか」「改善するとどう変わるか」を丁寧に記述することが得点につながります。
QCD分析の基本
Q:品質(Quality)
- ▸ 不良品率・クレーム件数の削減
- ▸ 品質基準の標準化・マニュアル化
- ▸ 検査工程の強化・自動化
- ▸ TQM(全社的品質管理)の導入
C:コスト(Cost)
- ▸ 材料費・加工費の削減
- ▸ 在庫削減による在庫保有コスト削減
- ▸ 外注コストの適正化
- ▸ 生産効率改善による原価低減
D:納期(Delivery)
- ▸ リードタイムの短縮
- ▸ 生産計画の精度向上
- ▸ 工程間の停滞・待ち時間の排除
- ▸ 受注から出荷までのプロセス見直し
解答フレームワーク
採点官はQCD(品質・コスト・納期)の3軸で解答を評価する。設問が「リードタイム短縮」なら納期(D)、「品質安定」なら品質(Q)、「コスト削減」なら費用(C)を主軸に据えて、残りの2軸への影響も補足すると得点が安定する。
【各ステップの書き方】問題工程の特定:「どの工程が」ボトルネックになっているかを与件文の記述(「〇〇工程で待ち時間が発生」「△△が属人化」等)から特定する。原因の分析:「なぜその工程が遅れているか」を4M(Man・Machine・Material・Method)の観点で整理。改善施策:「標準化(作業手順書作成)」「見える化(進捗ボード・IoT)」「情報システム化(生産管理システム)」の3方向から提案。効果:QCDのどの側面が改善されるかを明示。
【向く場面】「リードタイム短縮の施策を述べよ」「生産上の問題点と改善策を述べよ」型。事例Ⅲで最頻出のフレームワーク。
【注意点】「工程を改善する」という抽象的な表現は評価されない。「〇〇工程の作業標準書を作成し段取り時間を短縮する」など工程名・施策名・効果を具体的に記述すること。
解答テンプレート
問題は〇〇工程における〇〇(ムダ・停滞等)である。原因は〇〇のため〇〇が生じている。施策として①〇〇の標準化、②〇〇の見える化(情報共有)を実施する。これによりリードタイム短縮・コスト削減が実現できる。
採点官は「在庫過多・品切れの原因特定」と「具体的な在庫管理手法の提案」を確認する。「在庫を削減する」だけでは不十分で、どのような管理方式を導入するかという手法の具体性が問われる。
【各ステップの書き方】在庫の現状把握:「過剰在庫なのか品切れなのか」「どの品目で問題が起きているか」を与件文から特定。原因分析:「需要予測が不精度で見込み生産が多すぎる」「発注ルールが担当者任せ」など与件文の記述を根拠に原因を示す。在庫管理手法:「定量発注方式(発注点管理)」「定期発注方式(需要予測に基づく)」「受注生産への転換」「EOQ(経済的発注量)」から状況に合わせて選択。
【向く場面】「在庫削減の方法を提言せよ」「棚卸資産が多すぎる原因と対策を述べよ」型。
【注意点】事例Ⅳとも連動する設問(棚卸資産回転率)。在庫削減が効率性指標の改善につながることを意識して書くと総合的な解答になる。
解答テンプレート
過剰在庫の原因は〇〇による需要予測の不正確さと〇〇にある。対策として①受注情報の共有システム整備で需要予測精度を向上、②〇〇の発注方式に変更して発注ロットを最適化する。これにより在庫保有コストの削減とキャッシュフロー改善を図る。
採点官は「暗黙知の形式知化」という技術移転の本質が解答に含まれているかを確認する。「マニュアルを作る」だけでなく、実地訓練・評価の仕組みまで揃って初めて「承継の仕組み」と認められる。
【各ステップの書き方】後継者の選定:若手社員の中から誰が技術を受け継ぐのかを明示(ある場合は与件文から引用)。知識・技術の可視化:「ベテランの作業手順を動画・マニュアル化して形式知化する」という具体的な方法を記述。OJT・実地訓練:「ベテランと若手のペア作業制度」「段階的な責任移行」で実践的な技術伝達を設計。評価・フォロー:「技術評価基準の設定・定期的なフォロー」で承継の進捗を管理する仕組みを示す。
【向く場面】「技術承継の方法を述べよ」「ベテランへの依存を解消する施策を述べよ」型。
【注意点】「ベテランに働き続けてもらう」という属人化を温存する方向は解答として評価されない。組織として技術を保有できる「仕組み」の構築が求められている。
解答テンプレート
熟練技術者の暗黙知を作業標準書・動画マニュアルとして形式知化する。OJTで若手技術者に実地指導を行い、習熟度チェックリストで進捗を管理する。これにより技術の属人化を解消し、品質の安定化と後継者育成を同時に実現する。
採点官は「外注先管理の具体的な仕組み」と「品質・コスト・納期のQCDへの影響」を確認する。外注管理の問題は品質不安定・コスト増・納期遅延に直結するため、QCDを軸に改善策を提案する。
【各ステップの書き方】外注先の評価と選定:「品質・価格・納期対応力・技術力の評価基準を設定し、定期的に外注先を評価・選定する」。品質基準・仕様書の明確化:「図面・作業仕様書・品質検査基準書を整備して外注先と共有する」。情報共有・進捗管理:「生産管理システムで外注先と納期・進捗情報をリアルタイム共有する」。関係性の強化:「単なる発注関係から技術支援・共同改善へシフトし、長期パートナーシップを構築する」。
【向く場面】「外注管理の改善施策を提言せよ」「品質不良・納期遅れの原因と対策を述べよ」型。
【注意点】「外注先を厳しく管理する」という一方向的な管理志向より、「協力・共同改善」という関係強化の視点を入れると事例Ⅲの解答として高評価になりやすい。
解答テンプレート
外注管理の問題は品質基準が不明確なため不良品が発生している点である。①品質仕様書の整備と外注先への教育、②定期的な品質監査制度の導入、③受発注情報の共有システム化により、QCDを一括管理し外注先との連携を強化する。
採点官は「品質問題の原因が4Mで整理されているか」と「予防(作り込み)と検出(検査)の両輪が示されているか」を確認する。検査強化だけでは「後追い対策」であり、源流管理(前工程での作り込み)と組み合わせた解答が高得点につながる。
【各ステップの書き方】品質問題の原因特定:与件文から「人(スキル差)・機械(老朽化・精度低下)・材料(原材料のばらつき)・方法(標準化不足)」のどの4Mに問題があるかを特定。予防策(源流管理):「作業標準書の整備・作業手順の標準化」で人の技能差を排除し、前工程での品質を安定させる。検出策:「工程内検査・最終検査の強化」「検査機器の精度向上」で不良の流出を防ぐ。フィードバック:「不良発生記録→原因分析→手順改訂のサイクルを整備」してPDCAで継続改善を回す。
【向く場面】「品質不良の原因と対策を述べよ」「クレーム増加への対応策を提言せよ」型。
【注意点】品質問題は技術的要因だけでなく管理的要因(標準化・仕組みの欠如)が原因であることが多い。「新しい機械を導入する」という設備投資だけでなく、管理の仕組みの整備を提案することが事例Ⅲでは重視される。
解答テンプレート
品質不良の原因は〇〇(4Mのどれか)にある。①作業標準書の整備と〇〇工程での品質作り込み強化、②工程内検査の増設・自動化で流出防止、③品質データを設計・製造部門に還元して再発防止策を反映する仕組みを構築する。
採点官は「暗黙知の形式知化」という本質概念が解答に明示されているかを確認する。この概念を使って「個人の経験・感覚→誰でも参照できる形式」への変換プロセスを示すと、事例Ⅲの技術承継問題で高得点につながる。
【各ステップの書き方】可視化:「ベテランの作業を動画撮影・観察して動作・コツを洗い出す」。文書化:「作業手順書・チェックリスト・動画マニュアルとして整備し、誰でも参照できる形式知に変換する」。実地訓練:「ベテランと若手のペア作業制度でOJTを通じて技術を実践的に習得させる」。評価:「技術習得チェックシートで定期的に習熟度を評価し、不足スキルを追加訓練する仕組みを整える」。
【向く場面】「技術承継の施策を提言せよ」「熟練技術者への依存を解消するための方策を述べよ」型。
【注意点】「マニュアルを作るだけ」では机上の知識伝達にとどまる。OJT(実地訓練)と組み合わせて「身体知の移転」までカバーする必要がある。
解答テンプレート
熟練技術者の加工ノウハウを動画・作業標準書として形式知化し、②OJTペア制度で若手技術者に実地指導を行う。③技能習熟チェックリストで進捗を管理し、認定制度で技術レベルを段階的に評価する。これにより属人化を解消し品質の安定化と技術者育成の加速を実現する。
採点官は「内製/外注の判断基準」と「判断の論拠(与件文の根拠)」を確認する。「コアコンピタンスは内製」という原則だけでなく、「なぜその業務が内製/外注に適しているか」という与件文に根ざした根拠が求められる。
【各ステップの書き方】判断基準の整理:コスト(固定費vs変動費)・品質(自社基準が維持できるか)・スピード(外注のリードタイム)・機密性(技術・ノウハウの漏洩リスク)・変動対応力(繁閑差への柔軟性)の5軸で評価。内製すべき業務:コアコンピタンス(技術力・差別化要因)に直結する業務は内製化する。外注すべき業務:汎用的・繰り返し業務でコスト優位性がある業務は外注で変動費化する。管理体制の整備:外注先との品質・納期のコミュニケーション体制と評価制度を整備する。
【向く場面】「内製化・外注化の判断を述べよ」「SCM(サプライチェーン管理)の改善策を提言せよ」型。
【注意点】内製化は固定費増加につながることを認識し、生産量が少ない場合は外注化の方が合理的なケースもある。与件文の生産量・設備稼働率・コスト構造を確認して判断根拠を示すこと。
解答テンプレート
コア技術は内製維持し、〇〇工程は外注することで変動需要に柔軟に対応する。外注先はQCD基準で評価・格付けし、①定期監査と技術指導で品質を担保し、②受発注情報の共有システムで納期管理を強化してSCM全体の最適化を図る。
頻出キーワード一覧
生産管理・効率化
在庫・調達管理
品質・技術
外注・サプライチェーン
設備・IT化
サプライチェーン管理
設問パターン別 解答のポイント
設問パターン① 生産効率化
「生産効率化を図るための具体的施策を述べよ」タイプ
- 「どの工程が問題か」を与件文から特定してから施策を書く(工程名を明記すると説得力増)
- 「ムダ・ムラ・ムリ」の視点で問題を整理する
- 施策は「標準化」「見える化(情報化)」「設備・人員の最適配置」の3つを意識する
- 効果は「リードタイム短縮」「コスト削減」「品質向上」のいずれかまたは複数を明記する
解答例(140字)
組立工程での段取り替え時間が長いことと、中間在庫による工程間の停滞が問題である。①作業標準書の整備と段取り改善(SMED手法)でセットアップ時間を短縮し、②工程間の進捗をシステムで見える化して中間在庫を削減する。これによりリードタイム短縮とコスト削減を実現する。設問パターン② 品質改善
「品質不良の原因を分析し、改善策を述べよ」タイプ
- 品質問題の原因は「人・機械・材料・方法(4M)」の視点で分析する
- 再発防止策として「仕組み・ルール・システム」の整備を提案する(個人の意識改革は不十分)
- 検査工程の位置づけ(前工程での作り込み vs 最終検査強化)を意識する
- 品質情報のフィードバック体制(製造現場→設計・開発への情報還流)にも触れると良い
解答例(130字)
品質不良の原因は作業標準が整備されておらず、作業者個人のスキルに依存しているためである。対策として①全工程の作業標準書を整備して作業を標準化し、②工程内検査を強化して不良の早期発見・工程内修正を徹底する。品質情報は設計部門にフィードバックし再発防止を図る。設問パターン③ 技術力強化
「技術力強化のための施策を提言せよ」タイプ
- 「技術の蓄積・伝承・開発」の3つの側面から施策を組み立てる
- 熟練技術者の暗黙知をどう形式知化するか(マニュアル・動画・OJT)を具体的に書く
- 若手・中堅技術者の育成計画(目標・評価・ステップアップ)も含める
- 産学連携・外部技術機関との連携なども選択肢として提案できる
解答例(130字)
技術力強化策として、①熟練技術者の加工ノウハウを動画・マニュアルに記録して形式知化し、②OJT計画を策定して若手技術者が熟練者から直接技術指導を受ける体制を構築する。③習熟度評価制度を設け、段階的に技術レベルを認定することでモチベーション向上と技術承継を促進する。設問パターン④ 外注管理の改善
「外注先との関係をどのように改善するか述べよ」タイプ
- 外注管理の問題点(品質のばらつき・納期遅延・コスト管理不備)を与件文から特定する
- 「品質基準の明確化」「情報共有」「定期監査」の3点を軸に解答を組み立てる
- 外注先との関係を「管理・監督」から「協力・共同改善」へのシフトを提案すると評価される
- 内製化すべき工程とアウトソースすべき工程の判断基準も示せると完成度が高まる
解答例(140字)
外注管理改善のため、①品質仕様書・検査基準書を整備して外注先と共有し品質の統一を図る、②月次で品質・納期の実績を評価するサプライヤー格付け制度を導入して継続改善を促す、③受発注・在庫情報の共有システムを整備して情報連携を強化する。これによりQCD水準を向上させる。設問パターン⑤ 技術継承・知識移転
「技術・ノウハウの継承をどのように進めるか述べよ」タイプ
- 「なぜ技術継承が急務か(熟練者の高齢化・退職リスク)」を与件文で確認する
- 「暗黙知→形式知化→OJT→評価」のステップを順序立てて記述する
- 技術継承の「期間・担当者・評価方法」を具体的に書くと説得力が増す
- 継承した技術の品質維持・改善まで言及できると高得点につながる
解答例(140字)
技術継承のため、①ベテラン技術者の作業プロセスを動画・チェックリストで可視化して作業標準書を整備し、②ペアOJT制度で若手技術者に3〜6ヶ月の実地指導を実施する。③半年ごとの技能評価テストで習熟度を確認し、認定制度でモチベーションを維持しながら計画的に技術を承継する。よくある失点パターンと改善策
事例Ⅲで得点を落としやすいポイント
以下の失点パターンは実際の答案で繰り返し見られるものです。自分の解答と照らし合わせてチェックしてください。
NG例:やりがちな失点パターン
NG① QCDのうち1つの視点だけに集中してしまう
「コスト削減」のみに注目して「品質(Q)・納期(D)」への言及がない解答。事例Ⅲでは「QCD(品質・コスト・納期)」のバランスを意識した解答が求められ、一視点のみに偏った解答は得点が低くなりやすい。
改善策:施策を書いた後に「QCDそれぞれへの効果を書いているか」を確認するチェックリストを使う。効果は「コスト削減・リードタイム短縮・品質向上」の3つをセットで記述する意識を持つ。
NG② 製造業の特性(工程・設備・材料)を無視した解答
「人材育成が重要」「コミュニケーションを強化する」といった組織論的な解答に終始し、「どの工程を・どの設備で・どう改善するか」という生産現場の具体性がない解答。製造業固有の問題を理解していないと判断される。
改善策:与件文から「工程名・設備名・材料・工数」などの生産現場の情報を拾い上げ、解答の中に具体的な工程名や施策名(段取り替え短縮・SMED・カンバン方式等)を盛り込む。
NG③ 具体的な数値・目標のない抽象的な改善案
「在庫を削減する」「効率を上げる」など数値的根拠や具体性に欠ける記述。どれくらい改善するのか、何を指標にするのかが不明な解答は説得力が低い。
改善策:与件文に数値情報がある場合は必ず使う。なければ「リードタイムを〇日短縮」「不良品率を〇%以下に」のような目標値を設定し、改善の方向性と規模感を示す。
NG④ ボトルネック工程を特定せずに全体改善を提案する
「全工程の効率化を図る」のように、どの工程が問題かを特定せずに全体的な改善案を提案するケース。ボトルネック工程が特定されていないと施策の優先度や効果が不明確になる。
改善策:与件文から「〇〇工程で停滞している」「〇〇の待ち時間が長い」といった記述を探し、問題工程を特定してから施策を記述する。「ボトルネック工程は〇〇であり」という一文を必ず加える。
NG⑤ 設備投資の効果のみを書いて財務的妥当性に触れない
「新設備を導入すれば効率化できる」と設備投資を提案しながら、投資回収や財務負担への言及がない解答。中小企業の場合、資金制約が重要な前提条件になるため、投資規模・回収期間の意識が必要。
改善策:設備投資を提案する場合は「段階的な導入」「リースの活用」「補助金・助成金の活用」など財務負担を軽減する視点も添えることで現実性のある提案になる。
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